英語を書かなければならない事態というのは、我々の人生においてはかなり稀なことです。
そのため、英語勉強の中でもかなり注目されない分野です。
既に英語を読める方は「読めるんだから、まぁちょっと頑張れば書けるだろう」と思いがちです。
確かに、「日常で意思疎通を図る」「外国の友人とメールのやり取りをする」程度なら、ライティングの勉強を全くしないでもそこそこ何とかなります。
しかし、「受験英語における英作文」や「ビジネスでのメールのやり取り」、「正しくきちんとした英語が必要になる場面」においては、しっかり対策をしておかないと大惨事になりかねません。
「英語を読める」と「英語を書ける」は、全くの別物なのです。
目次
書くチカラ(ライティング)を鍛えよう
・まず必要な英語力
・「読める」と「書ける」は全く違う!
・決定的な構造の違い
・「書く」ことはそんなに難しいのか?
・難しかった理由
・英語を書くための対策
・書くチカラは絶対必要ではない
・オススメの参考書
まず必要な英語力
そもそも英語を「書く」ためには、大前提としてある程度の英語力が求められます。
最低でも、中学レベルの文法・単語・読解のスキルが必要です。「自分の伝えたいことを正確に書く」ためには絶対不可欠なラインです。
それらを習得して初めて、ライティングのスタート地点に立てるのです。
「読める」と「書ける」は全く違う!
決定的な構造の違い
おおざっぱに言って、「英語を読む」は「英語→日本語」、「英語を書く」は「日本語→英語」という構造になります。
英語を読む(英語→日本語)場合、大半は直訳で意味が通ります。
そのため、対象とする英語に対し、(日本語)訳文はせいぜい1~2通りに収束します。
日本語をよく知っている我々にとって、訳した後の文が日本語として適切かどうかのチェックは無意識に行われます。
しかし、英語を書く(日本語→英語)場合はこうはいきません。
日本語はさまざまな「省略」「比喩」が行われているため、英語への直訳は困難です。
また、訳した後の文が英語として適切かどうかのチェックにも労力が割かれます。
①直訳が困難
②適切かどうかのチェック
この2つの壁に対処できるチカラがないと、時として意図とは全く違う英語を書いてしまう事態に陥ってしまうのです。
「書く」ことはそんなに難しいのか?
たとえば、マクドナルドで「何を食べたい?」と聞かれて「私はポテト」と答えたい場合、正しい英語は何でしょうか?
“I am potato.”(私はポテト)では完全に間違いです。
これですと「私はジャガイモ(という存在)です」と言っていることになります。
これが「日本語→英語」の直訳が困難な理由です。
日本語ではさまざまな「省略」「比喩」が常に行われており、この場合ですと「私はポテト」という文が伝えたい内容は「私はポテトが欲しい」あるいは「私はポテトを食べたい」になります。
そのため、書き直すとしたら”I want potato.“(私はポテトが欲しい)が妥当でしょう。
いや、このままだと「ジャガイモ(potato)が欲しい」になってしまう!
“I want fried potato.(私はフライドポテトが欲しい)”にしよう。
いやいや、このままだと「フライドポテト1本」という意味になりかねない!
“I want fried potatoes.(私はフライドポテトが欲しい)”と複数形にするのが正確だ。
と、”I want fried potatoes.”でようやく適切な英語が出来たように思えますが、これでもまだ不適切です。
実はfried potatoes(フライドポテト)は和製英語なので、日本でしか通じません。
アメリカでは通常、French fries(フレンチフライ)と呼ばれます。
そのため、最終的に英語として適切な文にするなら”I want French fries.“(私はフレンチフライが欲しい)になります。
難しかった理由
いかがでしょうか。
当初直訳した”I am potato.”とはかなり異なりますね。
「英語を書く」際には、まず英訳しやすい日本語に言い換えて、その後適切な英語に訳すという二段階のステップを踏む必要があるのです。
このあたりは「話すチカラ(スピーキング)を鍛えよう」で述べたことと共通しています。
しっかりと日ごろから訓練しておかないと、ちゃんとした英語を書くというのは意外と難しいものなのです。
英語を書くための対策
書くチカラ(ライティング)を上げるための手段は、大きく分けて2つあります。
①参考書で勉強する
②英文の添削をしてもらう
「英語なんて全く書いたことが無い」「まず何から勉強すればいいのか分からない」という方は、①の「参考書で勉強する」をまず実践しましょう。
日本人が間違いやすいポイント、英語を書く際のコツなどの「基本的な知識」は書くチカラの土台にあたります。
カンタンなもの1冊でも構わないので、後述する参考書での勉強をオススメします。
その後は、ひたすらに②「英文の添削をしてもらう」ことに全力を注ぎましょう。
英語は実践あるのみです。
特に、ライティングに関しては「自分で書いてみる」→「先生や講師に添削してもらう」という対策が最も効果的です。
英語を書く際に一番やっかいな「自分では正しいと思っていたが、実は間違っていた英語」のミスも一発で分かるので、これ以上の勉強法は無いとすら言えます。
受験生の方は、英語の先生や予備校の講師の方に添削してもらうのがよいでしょう。
ビジネスマンや一般人の方は、オンライン英会話レッスンで講師の人に添削してもらいましょう。
「もっと気軽にやりたい」「無料で添削してもらいたい」という方は、言語学習者向けの相互添削サイトLang-8を活用しましょう。
これは会員数が40万人を超えるSNSで、あるユーザーが学習中の言語で文章を書くと、その言語を母国語とするユーザーが添削をしてくれます。
つまり、英語で文章を書けばネイティブが添削をしてくれるのです。
“相互”添削サイトなので、こちらも「外国人の日本語文章を添削してあげる」という必要性が出てきますが、無料で利用できるサービスなので負担にはならないでしょう。
書くチカラは絶対必要ではない
最後になりますが、日本人の大部分の方にとっては、書くチカラをアップさせる必要性は薄いです。
受験生やビジネスマンの方など、書き直しが効かない、ミスが許されない状況にいる方にはライティング能力の向上は必須です。
しかし、そうでない方にとっては書くチカラは必ずしも必要なスキルではないということを念頭に置いて頂き、それほど深い所まで勉強しなくてもOKだと気軽に構えてください。
受験生やビジネスマンでもない限り、英語を使っていく上で「書くチカラが無いと絶望的」という事態はめったに発生しません。
ぶっちゃけた話、書けなくても困りません。
とはいえ、発音を苦手とする日本人にとっては、話すより書いた方が何倍もコミュニケーションが楽なのも事実です。
書くチカラを鍛えれば「メールやチャットで外国の友人ができやすくなる」「サポートへの問い合わせができるので海外の製品を買いやすくなる」といったメリットが無数に出てきます。
より英語を楽しく学ぶために、コミュニケーションツールとしての「書くチカラ」を鍛えることを目標にすれば、挫折する可能性は格段に低くなっていく――ということを心の隅に残して置いてください。
オススメの参考書
『世界一わかりやすい英作文の授業』
「英語を書いてみたいけど、何を勉強すればいいのか分からない」という方にまずオススメする1冊です。
和文英訳・英作文の基礎から解説されており、「伝えたいことが伝わればOK」というシンプルかつ明確な視点に立脚しているので非常に分かりやすいのが特徴です。
英語と日本語の言語としての違いにも触れているので、読み物としても面白いつくりになっています。
とにかくカンタンで「話すチカラ」の向上にも通ずる所があるので、一読の価値ありがあります。
『英作文講義の実況中継』
大学受験生向けの参考書ですが、一般の英語学習者の方にも有益な一冊です。
「英作文講義」と銘打たれていますが、実際には英作文に必要なスキルの「和文英訳」や「英語表現の違い」に多くのページが割かれています。
和文英訳のレベルを上げなければ英作文が書けないのは自明の理です。本書もそれに違わず、「まずカンタンな和文英訳から」が徹底されています。
実際、前半では「この日本語を英訳せよ」という問題が並んでおり、一見するとかなりカンタンに見えるのですが、英訳に慣れていないと及第点に達する英語にするのはかなり困難を極めます。
解説が非常に丁寧なので、よく読みこんでじっくりと英訳のスキルを上げていきましょう。
難関大志望の受験生の方は、かなりレベルが高いですが『大学入試英作文ハイパートレーニング和文英訳編』『大学入試英作文ハイパートレーニング 自由英作文編』の併用をオススメします。