文法はやった、単語もやった、例文や短い文なら読める。
だけど長文が読めない。頭に入ってこない。
英語の勉強を始めると、誰もが一度はつきあたる「長文読解」の壁。
読むチカラを上げれば長文読解(リーディング)は可能になります。
長文読解を可能にする「読むチカラ」――その正体は、ある3つの特定のスキルなのです。
目次
読むチカラ(リーディング)を鍛えよう
・なぜ長文読解は難しいのか
・長文読解スキル①:大意を把握しよう
・長文読解スキル②:分からない部分は類推しよう
・長文読解スキル③:構成に気を配ろう
・オススメの参考書
なぜ長文読解は難しいのか
単語や表現や文法の知識さえあれば、英文を読むことは可能です。
「長文読解は苦手だが、短い文が2つ3つ続いたものなら読める」という方も多いでしょう。
そう、単語と表現と文法の知識さえあれば、どんな英文でも読めるのです。
ではなぜ長文読解は「難しい」と感じてしまうのでしょうか。
長文読解には、大きく分けて3つの「壁」が存在します。
1つ目は、「読む分量が多くて、読んだ内容を忘れていってしまう」という壁。
2つ目は、「読む分量が多くて、時間がかかってしまう」という壁。
3つ目は、「分からない英文が出てくる」という壁。
1つ目、2つ目の壁については、とにかく英文をたくさん読む「多読」をすることでかなりの対策になります。
長文を読んでいればある程度できるようになってくるので、それほど脅威ではありません。
しかし3つ目の「分からない英文が出てくる」という壁は、長文読解においてはかなり重要な問題です。
というのは、そもそも長文読解には分からない英文が紛れ込んでいるものなのです。
ではどうすればいいのか。
分からない英文が出てきたら、そこでもうお手上げではないか。
いいえ、違います。
分からない英文をうまく対処すればいいのです。
長文読解ができる人というのは、長文を全て訳せる人のことではありません。
分からない英文をうまく対処できる人が、長文読解ができる人なのです。
長文読解スキル①:大意を把握しよう
そもそも長文読解の目的って何でしょうか。
「新聞・小説・ニュース・試験問題――に出てくるような長い英文を読み、意味をつかむこと」と言ってひとまず良さそうです。
ここで重要なのが、「英文の意味をつかむこと」が目的なのであって、「英文を全て日本語に訳してカンペキに理解すること」が目的ではないということです。
「でも、長文を全て日本語で理解できなければ、長文読解ということにはならないのでは?」
それは確かに一理あります。
しかし実際の長文読解では、未知の単語・文法・表現などが頻出し、分からない英文というものは必ず出てきます(英語超上級者を除いて)。
いったいどうすればいいのでしょう。
カンタンです。
重要なポイントだけ理解できれば、他の部分なんて分からなくていいんです。
長文読解では全てをカンペキに理解する必要はありません。
ただ、「長文が何について語っているのか」「何が重要だと言っているのか」ということさえ分かれば、それ以外の文なんて理解できなくてもいいんです。
長文の大意を把握すること。
これが長文読解において一番重要なことです。
重要な所だけ分かれば、他の文は何となく意味をつかんでおく程度でOKです。重要でない文はまるごと無視してしまってもいいくらいです。
「そうは言ってもどこが重要な部分なのか分からない」と思う方も多いでしょう。
特に試験で長文読解をやらなければいけないという方にとっては切実な問題です。
英語の長文において重要な部分というのは大半の場合これらの部分です。
・長文開始から数行
・(下線部訳問題があったら)下線部の前後
・段落やパラグラフの最初と最後の一文
・長文終わりの数行
長文の重要な情報は初めと終わりに潜んでいます。
なぜなら、そこで「概要」と「結論」が語られている可能性が高いからです。
初めと終わりだけ読めば、少なくとも「何について語ろうとしているのか」「語った結論はどうなったのか」は理解でき、長文の大意をあらかた把握できます。
何について語られているのかが分かれば、個々の英文も急激に読みやすくなります。
繰り返しになりますが、長文読解で重要なのは大意を把握すること。
重要な部分さえ分かれば、それ以外の文など訳す必要すらないのです。
長文読解スキル②:分からない部分は類推しよう
さて、「重要なところだけ分かればよい」と言うのはカンタンですが、するのはムズカしいものです。
長文読解を続けていると、「何か重要なこと言ってそうだけど読めない文」というものは出てきます。
そんな時、どうすればよいのでしょうか。
手持ちの知識でも訳せない文が出てきたとき、それをカンペキに訳すことは不可能です。
あきらめましょう。
ただし、その文の大意はつかみましょう。何とか努力して。
分からない文から得られる情報はゼロですが、そのまま無視してしまったら本当にゼロです。
理解できる主語・動詞・単語、何でもいいので知識を総動員して100のうち3でも5でも重要な文から何か情報を得ましょう。
前後の文脈から「何を言ってそうか」と類推するのも良いアプローチです。
さて、ここで重要になってくるのが未知の単語の意味の類推です。
ある英文内に登場する単語の意味がすべて分かれば、その英文の大意の理解力は大幅に上がってきます。
ゆえに、知らない単語の意味をどれだけ類推できるかは長文読解においても非常に重要な要素になってきます。
「そんなこと言っても、知らない英単語の意味を当てるなんてムリだよ」……そう仰る方も多いでしょう。
そんなことはありません。
今まで見過ごされてきた、英語勉強のある分野を強化しておくことで、初見の英単語に対する類推力が強烈にアップするのです。
さて、ここで問題です。
「泪が流れた」
この「泪」という漢字、どういう意味でしょうか。
「うーん、”さんずい”に”目”か……。”なみだ”かな?」と思った方は大正解です。
でもちょっと待ってください。
なぜ「なみだ」だと分かったのでしょうか?
「そりゃ、”さんずい”は水を意味する漢字のへんだし、目はそのままだから」
そうです。
漢字の部分部分の意味を知っていたから、未知の漢字でも類推ができたのです。
英語も同じです。
dis-が「離れて」、-poseが「置く」という意味だと知っていれば、disposeも「離して置く」→「配置する、処分する」と正しい意味を導くことが可能になります。
これら個別の意味を語源といい、単語の語源を勉強することで長文読解の対策になることはもちろん、新たに覚える単語に対しての記憶力も大幅に向上します。
参考書としては『英単語語源ネットワーク』がオススメです。
重要な文の意味が分からなければ類推、それでもムリなら単語レベルで類推する。
地道な作業を繰り返すことによって、真の長文読解力は上がっていくのです。
長文読解スキル③:構成に気を配ろう
重要な文はたぶんココだ、でも類推しても全く意味がつかめない!
そんな時は最後の手段です。
もっと視野を広くもって、長文全体を見下ろしてみましょう。
一般的に、長文というものは「起承転結」の流れが重視されています。
論文や研究系の長文なら、「序論(問題提起) → 本題(調査結果) → 反論または補足 → 結論または展望」。
新聞やニュース系の長文なら、「導入(紹介) → 詳細 → 裏づけ・他の意見・関連事項 → 結論または展望」。
といったように、長文はある程度流れに沿った展開で書かれていることが多いのです。
流れが切り替わるのは段落の切れ目であることが比較的多いです。
これを踏まえて、一度長文全体を眺めてみましょう。
どういうことについて述べられているのか → 長文の初めを読む
結論はどうなるのか → 長文の終わりを読む
分からない英文はどの「流れ」にあるか → 全体の構成から読み取る
構成を読みとることによって、分からない英文が言っているのがポジティブなことかネガティブなことか、例を挙げているのかそれとも何かの証拠を挙げているのか、といったことが何となく分かります。
「何となく」でも効果は十分です。それを元にすれば文の大意はある程度つかめてしまえます。というか長文の大意から分からない文の意味を類推するので、ある程度正解に近づけるのは当然といえるでしょう。
その他、タイトルや訳注、設問文にもかなりのヒントが隠されています。
分からない英文が出てきたら、まず重要かどうかの見極め。
重要そうだったら、類推。
類推できなかったら、構成から何となく大意を読み取る。
とにかく少しでも情報を引き出す姿勢を崩さず、長文読解に取り組んでいきましょう。
オススメの参考書
英単語語源ネットワーク
「長文読解スキル②:分からない部分は類推しよう」で言及した、語源に関する参考書です。
詳細を別記事にまとめました → 解説:英単語語源ネットワーク
英語で楽しむ日本昔ばなし
長文読解のトレーニングをしようという方の1冊目として非常にオススメ。
「桃太郎」や「鶴の恩返し」といった有名な日本昔話が英訳してあるます。
左ページに英文、右ページに和訳、というシンプルな構造ですが、最大の特徴はその親切なつくり。
リーディング用の教材としてはよく名が挙がるのは、世界の名作や有名な話を英訳した「ラダーシリーズ」、「洋書」などですが、いずれも文章量がかなり多く、そもそも日本語訳が皆無なので、難易度が非常に高いのです。
「ページにぎっしり詰まった英文を、時には辞書を駆使して読んでいかなければならない」というのは想像以上の苦痛です。英語上級者でも挫折しやすいのが実状です。
その点、本書『英語で楽しむ日本昔ばなし』は左ページに英文、右ページには日本語訳という構造のため、「英文が分からなくて挫折」という事態を防げます。
量もほどほどで、英文や単語自体もかなり易しいのが嬉しいところ。
CD付属なのでリスニング対策もバッチリです。
「英語長文を読んでみよう」という方はまずこの本から試してみてください。
『1日10分 超音読レッスン』シリーズ
長文トレーニングの2冊目としてオススメの本。
左ページに英文、右ページに和訳というシンプルで分かりやすい構造は『英語で楽しむ日本昔ばなし』と似ています。
『英語で楽しむ日本昔ばなし』に比べ英文のレベルがやや上がっていますが、分かりやすい文・可視性に優れる見開き形式・多すぎず少なすぎない適切な文量、といったメリットが多く、挫折することなく勉強していけるでしょう。
『1日10分 超音読レッスン スティーブ・ジョブズ スピーチ編』、『1日10分 超音読レッスン 世界の名スピーチ編』、『1日10分 超音読レッスン 偉人伝編』、『1日10分 超音読レッスン 世界の名作編』など、シリーズ通して読み応えがあるものが多く、英語の勉強をしながら教養も学べます。
題名通り、1日10分で続けていけるのも魅力です。
ラダーシリーズ
長文読解のコツがつかめてきたら、後はひたすら多読しましょう。
本格的な入門書としては「ラダーシリーズ」がオススメです。
「ラダーシリーズ」は、使用する単語を限定して段階別にやさしく書き改めた、多読・速読に最適な英文リーダーです。
「ラダーシリーズ」として刊行されている書籍はどれも分量が少なく、英語自体もかなりカンタンで、その上なじみのある物語ばかりなので、多読入門にはうってつけです。
他には『シャーロック・ホームズの冒険』『Run,Melos,Run―走れメロス』『銀河鉄道の夜』などがあり、レパートリーには事欠きません。
しかし、多読入門とはいえ量自体はかなり多いこと、巻末に単語辞書はあるが和訳は無いことなど、難易度はそこそこ高いものとなっています。
そのため、英語初心者の方が買ってもまず間違いなく挫折します。
『英語で楽しむ日本昔ばなし』や『1日10分 超音読レッスン』シリーズがカンタンだと感じるレベルになるまでは挑戦を控えましょう。
HOLES
今も昔も、長文読解対策の王道は「洋書」です。
とはいえ洋書といえば難しい文が多いのもまた事実。
「ラダーシリーズだけじゃなくて、本格的な洋書を読みたい」という方にまず推薦したいのが本書『HOLES』です。
かなり平易な英語で書かれており、原書の『ハリー・ポッター』シリーズより格段に読みやすいのが特徴です。
そして何よりストーリーが面白い!
張り巡らされた伏線が怒涛の回収を見せる後半は一見の価値ありです。
読後の爽快感は比類するものなき水準です。
ハリー・ポッターと賢者の石
Harry Potter and the Philosopher’s Stone (Harry Potter 1)
今も昔も、長文読解対策の王道は「洋書」です。
多読に加え、速読と精読を、楽しみながら実践できるのは洋書の大きな武器です。
その筆頭としてよく挙げられるのが『ハリー・ポッター』シリーズです。
が、実は難易度が高いのです。
英語上級者であっても、普段目にしないような単語がバンバン出てくるため読み進めるのには苦労します。(まぁ魔法世界の話なので馴染みのない単語が出てくるのは当たり前なのですが)
本の厚さ、圧倒的な文章量もあいまって、途中で挫折しかねません。
なるべく日本語版の内容を忘れないうちに挑戦しましょう。
副読本として下記『「ハリー・ポッター」Vol.1が英語で楽しく読める本』を手元に置いて、参考にしつつ読み進めるのがオススメです。
また、難しいとは言ってもそれは「時々出てくるムズカしい単語」「圧倒的な量」に由来するものなので、しっかり取り組めば中学生でも読破は可能です。
「原書を3冊読破すればその言語をマスターできる」という説がありますが、1冊でも読破できれば既に英語上級者レベルです。
リーディング勉強のみならず、楽しみながら英語を学びたいという方にも強力にオススメできる不朽の名作です。
英語長文ハイパートレーニングレベル1 超基礎編
大学受験生の方向けの参考書です。長文読解の1冊目として最適でしょう。
これまでのリーディング参考書に比べ、おカタい学術的な長文が多くなっています。
読解自体にやや苦労するかもしれませんが、これも受験用と割り切ってやっていきましょう。
更に上を目指すのであれば、続編の『大学入試英語長文ハイパートレーニングレベル2 センターレベル編』『大学入試英語長文ハイパートレーニング (レベル3)』に進むことをオススメします。