読解問題といえば下線部訳。
下線部訳といえば何だかよく分からない英文。
読解問題での和訳部分は、たいてい構文がややこしく直訳が難しい部分が採用されます。
正しく構文を読み解かないと、和訳は全く違う意味にもなってしまいます。
英文を正しく読む英文解釈の技術は、和訳ひいては読解に一番重要なスキルなのです。
目次
受験生の英語対策:読解②英文解釈
・事前準備
・構文を正しく捉えよう
・英文解釈力と和訳技術
・オススメの参考書
事前準備
構文がややこしい箇所を正しく和訳するには、相応の英文法・英単語の知識が必須です。
「受験生の英語対策:文法」「受験生の英語対策:英単語」などを参考に、まずは大学受験に堪えうるレベルの知識を準備しておきましょう。
構文を正しく捉えよう
英文解釈で必要となるのは、分かりにくい構文を正しく捉えらる能力です。
例を挙げましょう。
次の英文を和訳してみてください。
なお、ここで”He”が指しているのは「ナイチンゲール」という鳥のことです。
He usually begins to sing about the middle of May, and after the second week in June people hear his voice no more.
さて、どうでしょうか。
この英文でポイントとなってくるのはandの読み方です。
「彼は普通5月の中ごろと、6月の第2週以降に歌いはじめる。人々はもう彼の声を聞くことはない」と訳した方がいるかもしれませんが、これは間違いです。よく考えたらおかしいですね。
この英文では、andで結ばれているのは”about the middle of May”と”after the second week in June”ではなく、and前後の文まるごとです。
正しい並列関係は
He usually begins to sing about the middle of May,
and
(after the second week in June) people hear his voice no more.
となり、正しい訳文は「彼は普通5月の中ごろに歌い始め、6月の第2週以後はその声を聞くことはもうなくなる」となります。
通常andという語は、同じような要素を並べるために使われます。
そのため A and B というカタチに我々は慣れてしまっています。
しかし受験英語ではA and (M) Bといった、「Bにかかる補助要素Mが挿入されたand文」のような非常に分かりにくい英文が出題されます。
A and (M) B のカタチではMは常にBにかかる、ということを経験的に知っていなければ対処は難しいことでしょう。
英文解釈力と和訳技術
先に挙げた例のように、「そもそも構文が難しくて訳せない」「訳出できるが構文を捉えきれていないため間違った意味になる」という英文は受験英語では頻出です。
特に比較級・仮定法・強調構文・倒置などは最たる例です。
構文を資格に見抜かないとまったく違う意味になってしまうため、大幅な減点になってしまいます。
さらに、きちんと英文の意味を捉えられたとしても、和訳技術がなければ「こなれた日本語」へと和訳するのは至難の業です。
無生物主語・長大な英文などを和訳する際は、適切な文量で区切ったり語順を入れ替えたりして正確で分かりやすい日本語にしなければいけません。
また、抽象度の高い英文を和訳する際に、「それがそうなる時、それが起こる」とitをそのまま「それ」と訳すのではなく、きちんとitが指すもので置き換えないと、完答はおろか部分点も危うくなります。
つまり、受験に出てくるような難解な英文を和訳する問題できちんと点を取るには、その英文がどんな意味なのかを正確に把握する英文解釈力に加え、それをしっかりした日本語にする和訳技術が必要になってくるのです。
オススメの参考書
英文読解入門基本はここだ!
英文を正しく捉える「英文解釈力」を鍛えるのに最適な入門書。
扱われている語彙は極めて平易なので、余分な労力なく「構文や文法知識を活用して英文を読み解く」というプロセスを学んでいけます。
他の参考書と比べるとかなりページ数が少ないのですが、にも関わらず基本を網羅しているのが嬉しいところ。
費用対効果はバツグンです。
英文解釈は是非これで鍛え始めましょう。
ポレポレ英文読解プロセス50
『英文読解入門基本はここだ!』の上級編にあたります。
前作に比べるとレベルはかなり跳ね上がります。
質・量ともに完成度はかなりのもので、この一冊をカンペキにすれば東大京大レベルにも十分対応できます。
前作に引き続き、ページ数が少なくよくまとまっているのも利点の一つ。
何周もして確実に英文解釈力をモノにしましょう。
ビジュアル英文解釈
ビジュアル英文解釈 (Part1) (駿台レクチャーシリーズ)
『ビジュアル英文解釈 (Part2) (駿台レクチャーシリーズ)』との二部構成になっている、実践型の英文解釈参考書です。
章ごとにまず要点が述べられているのでそれを確認し、載せられている英文を全訳し、詳細な解説とともに振り返っていく……という実際に英文を訳しながら学ぶタイプの参考書です。
受験生が間違えやすいポイントを軸に、雑談も交えて分かりやすい口調でどんどん進んでいくので、「楽しく英文解釈を学んで行きたい」という方にオススメです。
扱っている英文のレベルは高校1年レベルから徐々に上がっていき、最終的には最難関国立大レベルにまで及ぶので、英文解釈はこの2冊だけでもいい程です。
網羅性は非常に高いのですが、反面やや古い本なので、一覧性・復習のしやすさといった面では劣ります。
『基本はここだ!』『ポレポレ』の方がオススメですが、時間がある受験生の方で「実践性・網羅性・とっつきやすさを重視したい」という方がいらっしゃったら、使ってみて損はありません。
大学入試英語長文ハイパートレーニング
和訳技術を習得するためには、何より実践が一番のトレーニングです。
どんどん問題を解いていきましょう。
本書『大学入試英語長文ハイパートレーニング』は非常に詳しい解説が特徴の長文問題集です。
構文が入り組んでいて分かりにくい所も丁寧に解説されています。
英文解釈と和訳技術の並行トレーニングにうってつけと言えるでしょう。
入門レベルの『大学入試英語長文ハイパートレーニングレベル1 超基礎編』、センターレベルの『大学入試英語長文ハイパートレーニング (レベル2)』と難易度ごとに分けられていますが、いずれも良問揃いです。
最終的には『レベル3(やや難関大レベル)』を目指しましょう。
竹岡の英語塾難関大入試英語長文特別講義
レベル的には『大学入試英語長文ハイパートレーニング レベル3』の上位にあたる、難関国公立受験者向けの問題集です。
収録問題はいずれも非常に洗練された良問で、高い水準での英文解釈・和訳技術の実践トレーニングに最適です。
英文読解問題の解き方にもスポットを当てているので、難関大を目指す方は一読の価値ありでしょう。
英文解釈教室
オススメの参考書ではありません。
Amazonで超高評価を得ていますが、買わないでください。
二昔前は間違いなく英文解釈の名著だったのですが、それは以前の受験英文が難しすぎたため、このレベルの参考書が必要となっていたためです。
多読・易化傾向が進んだ現代の受験英語において、この『英文解釈教室』は不必要に難解すぎるのです。
そのレベルは現代の東大京大クラスを遥かに超えます。
最難関国立大を目指す方でも、ここまでやる必要はありません。
難解な参考書 = 良い参考書 ではありません。
最難関大でも『ポレポレ』や『ビジュアル英文解釈』で十分突破できるのが現代受験英語なのです。